2016年2月22日月曜日

『原発労働者』

多くの犠牲の上にこの便利な暮らしがあることは
重々感じていたのです

それを居心地悪く感じつつも
リアルな実態は直視してこなかった、ということの居心地の悪さ・・・
ここにきてマックス

福島第一原発事故後の一般市民の被曝問題を考えるにつけ
原発収束現場の作業員や、除染作業員のことが、

食品中の放射能による内部被ばくを考えるにつけ
農業従事者の外部被ばく・内部被ばくのことが、気になって・・・

もはや知らずにはいられない心境の折

目にとまったのはその名もズバリ 『原発労働者』 寺尾紗穂 著 




現場は深刻な問題を幾重にも孕んだもので
社会全体の労働問題であり、地方経済の問題であり、貧困の構造でもあり

ゆえに健康と引き換えの不安定な就労であっても
その仕事が無くなれば困るひとがいたり

プライドを持った職人が支えてきたという現場も今は昔
電力自由化に伴う効率化の流れと共に労働者教育や技術指導にかける時間も
定期検査期間さえも短縮され、結果的に安全がおろそかになっている実態・・・

そして、それらを原発労働経験者が本名で語ることの難しさ等々

静かな筆致でしたためられていました

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以前読んだ、漫画 『 いちえふ ~福島第一原子力発電所労働記 』竜田一人 著
のお陰で、現場の様子がなんとなくではあるもののイメージできたのは
理解する上でいくらかの助けになりました
(リアルな現場はもっと凄いに違いなく、私には想像しがたいです


ちょっと脱線ですが
『いちえふ』関連で調べていたら毎日新聞に興味深い連載があったので
リンクします 「福島をどう描くか」


竜田さんの漫画は、東日本大震災による事故後の原発収束作業に従事した
ご自身の経験を元に現場の具体的な作業や空気感、一作業員の心情等が描かれています

寺尾さんの著書では、1990年代~
事故以前・事故当時・事故後それぞれに従事していた方々に取材した内容を通して、
一人ひとりの(語るには重い)人生を垣間見つつ
それらが社会的な問題であることを浮き彫りにしています

「彼ら」ではなく目の前の「あなた」と向き合い
原発を「わがこと」として考えるための試みとして

「“わがこと”として考えることが非現実的だというならば、せめて現場の声に
耳を傾けること、状況を変えようと動く人に協力していくこと」の最初の一歩として


この本を読むまで、私はこの期におよんでも尚
どこか「遠いところ」の話と思っていたようで

第1章の中越沖地震後の新潟県・柏崎刈羽原発で働いた方の証言に
ようやく「わがこと感」がリアルになった気がしました

ニイガタはこういう方々の作業のお陰で守られてきたのだと

もっと住民が、国民が、知るべき・知らされるべきことが

たくさんあると思います

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・原発は、使用済み燃料の処分方法が未定なだけでなく

・最終処分を含めれば全くコストメリットのない、「高い」、否「高過ぎる」電力であり

・事故時でなくとも稼働に、点検に、
放射性物質を大気中にも海水中にも放出せざるをえない構造であり

・温室効果ガスであるCO2を排出しないかのように言う説には
トリックがある上に

・事故時には極めてハイリスクでありながら、熱効率はわずか30%にすぎず

・残るエネルギーは温水として海洋放出する(海水温上昇)という問題に加えて

・ウラン燃料の採掘・加工・運搬の問題があるばかりでなく 

・膨大な従事者に健康被害を及ぼす被爆労働無しには立ちゆかない電力
でありながらその労働実態は闇の中

・従事者の健康と人権はないがしろにされ続けるという
日本社会・・・  _| ̄|○


冒頭に書いた私の心境を、寺尾さんは
「今この瞬間も、私はひとを踏んづけて生きている」
と表現していました

そう
それくらいのこと。。。